全体を通して、田村の打撃は、フォームからいえば、これといった欠点は見当たらない。あえていえば、⑩のインパクトで前足である左足の突っ強りがやや早いくらいのもの。ここで、もう少しヒザにゆとりがあれば、バットはまだシャープに振りきれるようになる。 　バッティングはフォームがいいから打てる、というものではないが、フォームがいいことは打撃向上の大きな要因であることは確かだ。田村にとって、今後は動いている球を自分自身の感覚でいかに捕えるかが大事になってくるだろう。その感覚をつかむことができればいい打者になれる。どんどん練習を重ねていくことだ。　同じチームに大宮という、いい捕手がいるため、出番があまり与えられていないようだが、控えながらも一昨年あたりから試合出場の機会を増して、最近では先発でマスクをかぶることも多く、大型捕手としてなかなか楽しみな選手である。順を追って見ていこう。 　①のスタンスは、ヒザの力も抜けてリラックスした構え方で非常にいい。②から始まったバックスイングは、③のトップで重心が右足にしっかりとのっている。そこから、力をためて腰をいれたまま、体も開かず④～⑥といい形でふみ出しが行われている。上体が前に突っこむこともないし、無理なくスリ足で前足を踏みこんでいるのは非常にいい。⑥で着地したあと、⑦から腰を中心に体を回転させながら、バットを振りおろして、⑩のインパクト、⑪以下のフォロースルーへと続いているが、ここでも大きな欠点は見られない。 田村　藤夫 特に欠点の見当たら 　　　　　ないバッティング 　　　　　　　　　　　解説・川上哲治
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